着物は「家では洗えない」「お手入れが大変」「クリーニングに出すと高額な費用がかかるから維持が大変」そんなイメージをお持ちではないでしょうか。
着物の生地といえば絹。その先入観が上記のようなイメージを抱かせています。
実は絹以外にも着物の素材はたくさんあり、お手入れもクリーニングも不要なんていう簡単に扱えるものもあるのです。
そこで今回は各生地の特徴やお手入れの方法をまとめました。
Contents
初心者向けの着物の選び方と必要なものはこちら
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【着物】初心者向け!着物の選び方と必要なもの
着物に興味はあるが、必要なものがわからないし、ルールもわからない。そんな人のために着物を着るために最低限必要な物をすべてまとめてみました。
正絹(しょうけん)
着物の中で一番メジャーな生地です。
今回まとめた中では扱いが一番難しい生地になります。
正装として扱われる着物は基本的に正絹で仕立てられています。
特徴
織り方にもよりますが、基本的に滑りがよく、着付けがとてもしやすいです。
肌触りはなめらかで静電気も起こりにくいので、着心地がいいです。
寒い頃には温かく感じられ、暑い頃に着ても比較的涼しく感じられます。
お手入れの方法
着用後には室内の日が当たらない場所でハンガーにかけて、着物ブラシやタオルなどでほこりを取り除きます。
着物の状態を見て汚れがあればタオルやティッシュで吸わせるか、霧吹きで水をかけてタオルで軽くたたくように汚れを抜きましょう。
シミのように広がる汚れがあればベンジンを使って汚れを落とす方法もありますが、余計なシミを作りかねないのでクリーニングに出してしまうのが一番です。
汚れを落とし終わった後に一晩以上干して、湿気をとり除いてからしまいます。
シーズンオフもしくは汚れが気になり始めたらクリーニングに出してください。
そのほか、虫に食われたりカビが生えたりするので防虫剤と年数回の陰干しは必須です。
木綿
浴衣でお世話になってる人も多い綿素材。
種類の幅広さと扱いやすさから普段着としておすすめ。
特徴
綿の温かさや柔らかさがあるので、肌に触れたときの触り心地はとてもいいです。
汗をよく吸い、丈夫ですが、布同士の滑りはそこまでよくありません。
織り方や生地の厚みが様々なので、季節に合わせたものを購入すれば、特に冷え込む1・2月頃を除いたほぼ一年中着ることができます。
そのため、ネットで購入する際などには生地の厚みもチェックが必要です。
軽い素材ではないので、分厚いものは重みが出てくる点も注意してください。
お手入れの方法
綺麗に畳んでお家クリーニング(手洗い)の設定をした洗濯機におしゃれ用洗剤をいれて回すだけ。
洗い終わったら皺を綺麗に伸ばして日陰で干して完了です。
皺がつきやすい素材なので、干すときに注意しましょう。
特汚れが気になるということがなければクリーニングに出す必要はありません。
皺が気になる箇所があればアイロンをかけましょう。
麻
薄物でメジャーな素材。
麻100%のものもあれば木綿が混織されている綿麻(めんあさ)と呼ばれるものもあります。
特徴
ゴワゴワしている素材ですが、手触り自体はシャリっとした感じです。
皺がつきやすい素材なので、着物自体に麻独特の味わいがあります。
肌に密着したりせず、暑さを感じにくいので、夏でも快適な着物ライフが楽しめます。
肌に合う合わないが顕著に出る素材なので、肌が弱い方は綿麻にしたり、きちんとお店に出向いて選んだりと気を付けて購入してくださいね。
お手入れの方法
おしゃれ用洗剤で手洗い(押し洗い)が基本。
面倒な場合はお家クリーニング(手洗い)の設定をした洗濯機に入れておしゃれ用洗剤でもOK。
脱水をきっちりしてしまうと皺だらけになってしまうので、短めに済ませましょう。
干すときにしっかり皺を伸ばしておけば乾いた時には綺麗に伸びます。
もし気になればアイロンをかけても大丈夫ですが、元々ある凹凸の風合いが変わってしまうので、押し当てずにあて布をして軽くかけるくらいで十分です。
一部分だけであればハンガーにかけて霧吹きなどで水分を含ませて皺を伸ばしてそのまま乾かすだけで直ります。
ウール
そこまで見かける頻度は高くありませんが、昔からある素材。
洋服と同じでウール100%のものもあれば絹が混織されているものもあります。
特徴
他と少し扱いが違い、基本的に単衣で仕立てますが、袷のシーズンにも着ることができます。単衣~袷の時期に着るウール着物と薄物のウール着物の2パターンとなります。
羊毛なので暖かいけれど、むれにくく、皺もつきにくいです。
デザインについては基本的にシンプルなものが多く、一着に使う色の数も少な目です。
お手入れの方法
おしゃれ用洗剤で手洗いが基本。
面倒な場合はお家クリーニング(手洗い)の設定をした洗濯機に入れておしゃれ用洗剤でもOK。
脱水だけは注意して、長くても1分以内にして済ませましょう。
皺が付きにくい素材ですが、気になればアイロンをかけても問題ありません。
一番気を付けなければいけないのが保管方法。
ウールは虫がとてもつきやすいので、防虫剤は必須です。
ポリエステル
ネットショップや呉服屋さんのチェーン店安売りされている着物の多くがこちらです。
今回まとめた中では扱いが一番簡単な生地になります。
ほかの素材が混織されているものも見かけます。
特徴
着物そのものに手描きで何かデザインを施したり、糸の色を染めて織って柄を出す…ということはなく、プリントデザインです。その分柄はとても豊富ですし、色合いの幅もとても広いので、お気に入りが探しやすいです。何よりも安い!
布同士の滑り方は正絹に近いものがありますが、発色を比べると鮮やかさは正絹には負けます。
洋服と違って空気がそこまで入ってこないので肌に張り付きやすく、熱がこもり夏は暑いです。袷にしてもペラペラなので冬は寒いです。そして静電気もすごい。夏も冬も着づらいことこの上ないので着るとするならば春と秋がおすすめです。どうしても冬に着たいということであれば静電気防止剤をかけて、タートルネックと合わせるなど現代風な着こなしをすると過ごしやすいです。
お手入れの方法
お家クリーニング(手洗い)の設定をした洗濯機にポン!おしゃれ用洗剤を投入!以上!
洗い終わったら皺を綺麗に伸ばして日陰で干して完了です。
ほとんど皺にはなりません。
長く持たせたいということであれば手洗いでもOKですが、ポリエステルはガンガン洗えて安価に買えることがいいところなので、そこまで気にする必要はありません。
東レ シルック
ポリエステルはポリエステルでもワンランク上のポリエステル。
東レ株式会社が出しているシルックというポリエステルの生地です。
特徴
ポリエステルだけどよりシルクに近いものにと追求されているので、普通のポリエステルよりもずっと過ごしやすいです。
普通のポリエステルのときにネックになっていた静電気については対策がされているので冬に入ってもそこまで気になりません。効果が薄れた場合にはアイロンがけで復元することも可能です。
デザイン性についてはプリントだったものから手描き染色へ変わり、正絹の着物と変わりない染色工程で作られます。
それ以外にも防汚・撥水・撥油性能があるため、少し価格帯が上がっても安心して着ることができます。
お手入れの方法
通常のポリエステルと何ら変わりないので、気軽に丸洗いして問題ありません。
まとめ
ここまで正絹の着物はお手入れが少し大変、それ以外は結構楽チンという話でしたが、実は正絹にも簡単にお手入れする方法があります。
それは呉服屋さんでガード加工(+クリーニング)の契約をすることです。
内容としては正絹の着物は簡単にクリーニングに出せないから最初から撥水加工と防汚加工してしまおう!というものです。さらにその特典としてガード加工をした数年間はクリーニングを無料でやりますよというサービスを付けている呉服屋さんがあります。
ちょっとやそっとでは汚れませんし、お店に足を運ぶ必要はありますが費用を気にせず、本職の方に気軽にクリーニングに出すことができます。
呉服屋さんによって条件が違ったり、そもそもやっていなかったりするのでホームページを見たり問い合わせをして確認してくださいね。
ただし、ガード加工も無料ではなく数万円ほどはかかるので(着物を仕立てるときに交渉をしたりもできますが)、手間をとるか、お金をとるかといったところです。
生地ごとに長所と短所が違い、かかる費用や手間も違ってくるので、理解した上で自分にぴったりのものを選んでくださいね。