洋服の場合はその服が元々着られると想定されている季節にかかわらず、春物だろうと夏に着たり冬に着たり、好きなようにコーディネートして着ています。しかし素材や作りなど季節を意識し作られているものががほとんどです。
それは着物の場合においても同じで季節ごとに作りの違う着物を着ます。そこで、季節ごとにどんな種類がありどのように選んでいけばいいのかをまとめてみました。
着物のタイプは三種類!
それぞれの着物は以下の通りです。
- 寒いシーズンには「袷(あわせ)」
- 暖かくなってきたら「単衣(ひとえ)」
- 梅雨が明けて暑さが本格化したら「薄物(うすもの)」
季節に合わせてこの三種類の着物を着まわします。
また、残暑過ぎたころには再び「単衣」といった流れになります。
そもそも袷や単衣、薄物とは
有名な話ですが、着物は一つの反物(たんもの)、つまり一枚の布から作ります。
反物を切って縫い、着物の形にすることを仕立てるといいますが、その仕立て方によって着物の種類が変わります。
大きく分けると「袷」と「単衣」の2種類があります。
単衣の中でさらに細かく分けると「薄物」という種類を区別することができます。
袷
袷の場合は、言葉の通り、仕立てるときに一本の反物だけではなく、さらに裏地をつけて仕立てます。
着物の上半分につける裏地を胴裏(どううら)もしくは奥裏(おくうら)と呼びます。
下半分につける裏地を八掛(はっかけ)もしくは裾回し(すそまわし)と呼びます。
胴裏は女物であれば、ほとんどが白色のシンプルなものです。昔は紅絹(もみ)と呼ばれる緋色や朱鷺色と呼ばれるピンク色のものがありましたが、今はリサイクルショップや譲り受けたものの中で見かけることがある程度です。
男物であれば、今でも紺色や藍鼠、鼠色など色味のあるものをつけます。
胴裏がある程度色が決まっているのに対し、八掛は好きな色を選ぶことができます。
裾の裏にもつけることになるので、歩いている際に裏返ってちらりと覗くのでお洒落のポイントにもなってきます。
男物は通し裏といって胴裏のみで作り、八掛はつけないのが普通ですが、胴裏と八掛とにわけて女物風に仕立てることもあります。
単衣
単衣の場合は、裏地をつけずに、反物一本から仕立てます。
昔は袷の着物を着る期間が長く単衣の期間はほんの少しだったので、着物をたくさん持っているような着物好きな人が仕立てるものといったイメージが強かったですが、最近では単衣を着るような暑い期間が長くなってきたため、仕立てる人も多くなりました。
その構造上、裏地をつけたときよりも布の強度が落ちるため、居敷当て(いしきあて)という下半分に補強布をつけることが多いです。
つけないで立ったり座ったりを繰り返すと縫い目に大きく負担がかかり、そこから裂けてくることがあります。
薄物
着物を調べていると時々見かける、絽(ろ)や紗(しゃ)と呼ばれるものもこの薄物に分類されます。
絽も紗も生地の種類のことで、単衣の中でも透け感のある生地を使用して仕立てたものが薄物です。
生地が薄いので涼しいのはもちろんですが、長襦袢を透かして楽しむという性質上少し上級者向けになります。
こちらは綺麗に長襦袢のデザインが浮き出たほうが見た目がいいため、あまり居敷当てをつけることはありません。
代わりに長襦袢のほうに居敷当てをつけて補強をします。
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まとめ
着物の種類ごとにある程度着れる季節が決まっているとはいえ、和服の場合は着物だけではなく長襦袢でも調節することができるので、着たい着物と手持ちの長襦袢を考えてコーディネートしましょう。
例えば、秋に入ったけれどまだ少し暑い日に袷が着たいということであれば単衣の長襦袢に袷の着物を着ることで少し暑さが軽減できます。
ただし、洋服と違って着物種類によって構造や見た目が違うので、着る人が見ればどの季節のものかがわかってしまいます。
薄物を秋に入っても着ていたり、真冬に単衣を着ていると流石に「何故?」と思われてしまいますので、大きく季節を外さないことだけ注意しましょう。
また、屋内と屋外で気軽に脱ぎ着の調節ができないので、長くいるのはどちらかを考えた上でコーディネートをする必要があります。
屋外にいる時間が長いのであれば肌襦袢の下にヒートテックを合わせたりタイツを合わせて厚着をし、屋内にいる時間が長いのであれば必要以上の厚着は避け、コートなどで調節をします。
多くのサイトでは何月からこの着物と書いてありますが、昔と今では気候が変わってきていますし、同じ時期でも年ごとに寒暖差は違うので、そのときそのときにあった着物を選んでいけば十分です。